TOWAVASEのアトリエを訪ねて
TOWAVASEのアトリエを訪ねて
2015.2.20 / text: MAVUNO / photo: Shimada Tae

東洋の職人の技術や文化に敬意と愛着を抱き、西洋アンティークのような上質な空気感を
融合させたものづくりを目指したTOWAVASEは、2011年デザイナーの山口聡子さんにより
スタートしました。

TOWAVASE(トワヴァーズ)は、日本語の永遠を意味する”TOWA”と仏語の花瓶を意味する
”VASE”を合わせた造語で、「永遠に主役を引き立てる脇役であることと、過去から未来に永遠に
引き継がれていく花瓶の様であること」をブランド名に込めています。



彼女が展開する「東洋の技術と西洋の文化を融合した」コレクションは、本物のアンティーク
ウェアに見紛うほどの優雅で繊細な作り。そこから醸し出される世界観と美意識は毎シーズン、
着実にファンを増やしていっています。


それまで、企業デザイナーとして様々なブランドでキャリアを積んできた山口さん。
プライベートでは、西洋アンティークに心を寄せる一方、デザイナーとしては、東洋の職人の
きめ細やかな技術に尊敬の気持ちを抱いていました。


毎シーズン発表されるシルク素材の捺染プリントのデザインは、インドの更紗や動植物など、
どこか東洋の文化を感じさせます。
TOWAVASEが単なるヨーロッパのアンティークウェアの物真似に終わらないのは、彼女独自の
センスとディテールへの強いこだわり、それを実現させる東洋の職人の時間と労力、そして
技術の賜物によるものです。

フランスで最初に有名になった日本人、レオナール・フジタ 画家の藤田嗣治は、2013年のTOWAVASEの
SPRING/SUMMERコレクションのテーマにもなりました。
「私はフランスに、どこまでも日本人として完成すべく努力したい。」
日本画の技法を油彩画に取り入れつつ「乳白色の肌」とよばれる独自の画風を大成した彼のスタイルは
ブランドを語る上では欠かせないアイコニックな存在です。

1920年代フランスのとあるファミリーの朽ちかけたアルバムがTOWAVASEを形作る
イマジネーションの源。
そこに写る家族の日常に想いをはせて、その声にそっと耳を傾ける事で、次なる
コレクションを生み出す可能性を探ります。


ヴィクトリアン時代の麗しいパターンを手本に、アンティークレースやボタンなどと言った
フェミニンな対象を愛でつつも、ワークウエアのような男性的なスタイルをデザインに組み込んでいる
のもTOWAVASEの特徴の一つ。

ハンドメイドのコスチュームジュエリーに、世界の有名メゾンとも工場を同するオートクチュール
刺繍の優雅なテクニックを駆使しながらも、日常着の枠を越えて決して特別になりすぎないのは、
気構えない50代、60代の目の肥えた大人の女性にも愛されるようなものづくりを意識しているから。

2015年のSPRING/SUMMERは、19世紀中頃のパリ万博をきっかけに西洋で巻き起こった
「ジャポニスム」がコレクションテーマ。
大胆な色使いや構図、独特な装飾模様の工芸品や美術作品が注目され、芸術家や文化人をはじめ
として日本の虜になっていったパリの人々。
モネ、ルノワール、アルフレッド・ステヴァンス・・・
日本の美しさに翻弄された画家たちの作品にインスピレーションを得たコレクションを繰り広げます。

「永遠に残る物を目指す」
TOWAVASEのものづくりは、古い時代へのオマージュとそれを現代の息吹で表現することで、
次の世代へ繋げていくというデザイナーの姿勢によるものです。